Nikon F2 Photomic A
本日もご覧いただき、ありがとうございます。
も少しカメラネタ続きます(^^;
詳細を紹介しない訳にはいかない宝物ですよ。
Nikon F2 Photomic A。

このカメラ、Nikonのプロ用カメラとしては2代目のボディにAi絞り連動方式のPhotomic Aファインダーを載せたバージョンです。
1959年に、Nikonは初の一眼レフカメラ、Nikon Fを発売しますが、その12年後の1971年に次号機 F2が発表されます。
外観はとても良くにていますが、中身はほとんど全部新設計/新造と言っていいんじゃないかと思います。
外観上のいちばんの違いは、Nikon FはレンジファインダーカメラのNikon SPボディを流用した設計であったため、シャッターボタンが軍艦部の背面に近い方に配置されていたのに対し、F2はより押しやすい前面に近い方に移動されたこと。
Fのシャッターボタンの配置は、もともとSPでは交換レンズ(たぶん広角から標準系まで)のピント調整をボディのマウント側に作られたヘリコイドを使って行なっており、その操作をちょうど一般的なシャッターボタンの位置に設置されたギアを中指で操作することで自然にシャッターボタンの位置に人差し指が来るような設計になっていたので、そのボディの機構を流用したためだと思います。
Nikon F、F2ともにプロ用機としては群を抜く耐久性を誇っており、様々な逸話が残っています。
特にFでは『海水に水没してしまったけど、真水に浸けて持ち帰り、オーバーホールに出したらちゃんと動作するようになって帰ってきた』とか、『戦場の従軍カメラマンが流れ弾を被弾したが、偶然にもNikon Fに着弾して命拾いした』とか。
Nikon F2においては、その耐久性は『永く(長く じゃない)使える』というのが印象的で、シャッターの耐久性は実に15万ショットと言われています。
私のNikon D750は2015年5月頃から使い始めて現在ちょうどまる8年(!! もうそんなにたつのか)を過ぎたところですが、まだ16,000ショットを超えたところです。
このペースで使ってもざっと75年、D750購入時からF2を使い始めたとしても残り67年はかかるわけで、フルメカニカルで内部はギアやスプリングの類で構成されているシャッターが、これほどの耐久性を有しているというのは驚異的というほかありません。
一方、Nikon F2とほぼ同時期に発売されたCanon F1は露出計をボディ内に配置したことで非常にスマートな外観を持ち、また、Canonの考え方として、広角から望遠に至るまで色のバランスを統一する(要するにレンズ間で色のばらつきを出さない)という思想を持っていたため、Canon F1はカラーを多用する広告分野で強く、耐久性が信条だったNikon F2は報道分野で活躍するというふうに、意図せずに舞台というか、得意分野が別れていたようです。
さて、そんなNikon F2のアウトラインです。
カメラ正面に向かって左側、いまではまず見ることがないセルタイマーレバー。
最大10秒から最短2秒まで。
その右上にあるのは、ボタンは絞り込みボタンで、絞りを実際にセットされている絞りまで絞り込んで被写界深度を確認できる、というものです。
その周囲にあるリング状のレバーはミラーアップレバーで、絞り込みボタンを押しながら反時計回しに回します。
ミラーアップは、特に振動を嫌う拡大撮影、例えば顕微鏡写真や天体望遠鏡を使った写真撮影のとき、シャッターを押す前にミラーアップしておけばクイックリターンミラーのショックの影響を排除できる、というものです。

いまのNikonのレフ機にも共通のレンズを外すためのロック解除ボタンです。
デザイン的には1977年発売のNikon FEと同じもので、おそらく同じパーツが共通して使われているものでしょう。

フォトミックファインダーはAi露出計連動のもの。
このあたりはNikon F/F2共通の拡張性の高さと言っていいのだと思いますが、露出計の機構をすべてファインダー内に収めてしまっているため、こうした『カニの爪』→『Ai』への移行の際も、ボディはそのままでファインダーを交換してやれば新方式に対応できるという離れ業ができたのです。
といっても、おそらく技術陣の創意工夫は大変な困難を伴ったものと思われますが。

このフォトミックファインダはAi方式対応なので、露出計連動レバーがつけられており、ついていたレンズももともとはカニの爪方式だったものがAi改造されていて、その露出計連動ガイドと噛み合って絞りの相対位置を検出できるようになっています。
ちなみに、Photomic Aファインダーだったか、このF2 Photomic Aカメラボディだったか、どちらかを購入するとカニの爪方式のレンズを一本だけ無料でAiに改造することができるサービスがあったと記憶します。
改造そのものは当時、一本あたり2,000円だったか3,000円だったかがかかったと思いますので、そこそこ喜ばれたんじゃないかなと。

F2を上から見下ろしたところ。
非常にシンプルですね。
フォトミックファインダの中に露出計が組み込まれているので、後述するシャッタースピードダイヤルとASA感度(ISO感度)が同軸に備えられています。
つまり、カメラのシャッタースピードダイヤルの上にフォトミックファインダがASA感度設定ダイヤルと一体になってかぶさっているという格好です。
こうすることで別にASA感度ダイヤルを設けるよりもスペースを節約しているのだろうと思われます。

本来は上から見えるはずのシャッタースピードダイヤルは、ファインダがかぶさったことによって見えなくなるので、ファインダ側にこのようにシャッタースピードを表示するようになっています。

電源スイッチは巻き上げレバーに仕込まれています。
この格納状態では電源はOff。

引き出して赤い丸が見えると電源Onです。
このPhotomic Aファインダは測光用の受光素子にCdS(硫化カドミウム)を使用しています。
このCdSというのは光の強さによって抵抗値が変わる性質のもので、暗くなるほど抵抗値が大きくなります。
真っ暗になるとほとんど抵抗値が無限大になるため、CdSだけを使うのであれば電源のOn/Offは不要なはずです(PENTAX SPFがそうでした)が、このPhotomic Aファインダの上位機種としてPhotomic ASというファインダがあり、こちらはより感度がよく、さらに反応速度も速いSPD(シリコンフォトダイオード)が使用されていて、これは光の強さに関係なく常に通電された状態でバッテリを消費するため、その使用を前提にして設けられたものでしょう。

ASA(ISO)感度の設定ダイヤルです。
手元に来た時点ではASA400がセットされていました。

このダイヤルをつまんで上に持ち上げてやるとASA感度の変更ができます。
ここではASA100にセットしてみました。
ASA感度ダイヤルに『1』とか『2』の表示がありますが、これは露出倍数でしょうね。
つまり、ASA100のフィルムを使っているときに『1』を『100』のところに持ってきてやると『一段暗い露出』を示してくれ、『2』だと『2段暗い』という感じ。
別にこの表示がなくても、同じことは感度設定を200や400に合わせても同じことができます。
逆に50、25に合わせるとそれぞれ1段、2段明るい露出を示してくれます。

その露出はファインダ内だけではなく、このファインダの頭のところにも表示されます。
これは電源Off状態なので針は動いていませんが...

電源をOnにすると針が動きます。
この針を...

ここに来るようにシャッターダイヤル、または絞りリングを調整すると適正露出が得られます。
先程の露出補正については、その露出補正値にセットして同じようにここに合わせると、設定した段数だけオーバー、あるいはアンダーに設定できる、という寸法です。
慣れてくると、わざわざ露出倍数を設定しなくても、この針の位置で、例えば1/2段とか1段とかを調整できるようになるものです。
Nikon F2のスゴイところは、機械制御シャッタであるのに、ダイヤルの数字の間の中間スピードも設定できたところです。
私の記憶の中ではそのようなことができたのはこのNikon F2くらいだったと思います。

この露出ゲージは当然のことながらファインダ内でも観ることができます。
ファインダー下部の表示のうち、真ん中にあるのが露出計のゲージで、右側にセットしてあるシャッタースピード、そして、左側にはNikon純正でAI改造をしたレンズであればファインダの小窓から絞りリングの絞り値をここに表示してくれるのぞき窓があります。
スマホで撮った画像なので荒いですが、もちろん、肉眼で見たらもっと鮮明に見えますよ。
ちなみに、中央にある円形のものは、ピントを厳密に調整できるマイクロプリズムと呼ばれるもので、ボケの大きさを4倍(うろ覚え)に見せてくれるのでピントの山をつかみやすいというものです。

こちらはフィルムの巻き戻しクランクとレバーです。
現在のデジタル一眼には絶対にない装備(笑)
ちなみにこのカメラにはストロボを装着するいわゆるホットシューがありませんが、別売でここにホットシューのアタッチメントを取り付け、当然コードレスで純正ストロボを発光させることができます。

マウント側に目を転じます。
これは現在でもD750などに装備されている露出計連動レバーです。

Nikonらしく、カニ爪のレンズを使うときはこうやってちゃんと格納して干渉しないようにできます。

レバーを再び出すときは『A』の文字のところにあるレバーを横にスライドさせてあげればこうやって出てきます。

さて、このF2のF2たるところです。
背面のこのボタンを押してやると、フォトミックファインダの後ろ側がリリースされます。
このボタンがけっこう硬くて、私は親指の爪でも押しきれず、プラスチックのボールペンの先端で押してやることでリリースできました。

前方のロックはこのレバーを押し込みながら前方に回転させることで同じようにリリースできます。

外れました。
側面のレバーは、回さない状態だとこの爪がこの位置にあってボディにファインダを固定していますが...

回転させるとこのように爪が開いて拘束を解きます。

ファインダを外すとシャッターダイヤルが姿を現しました。
指標は左側にありまして、いまは1/4秒にセットされた状態。
この赤矢印の先にあるポッチはファインダ側にはまってシャッタースピードダイヤルの位置を伝える役割です。

先程のASA感度ダイヤルの裏側、ここにはまるのです。

レンズを通ってきた像がミラーで90度方向を変え、フォーカシングスクリーンに結像している様子がよくわかります(ここでは左右反転しています)。
これがファインダの中に設置されているペンタプリズムで正像に整えられて撮影者の眼に届く、という構造。

そのファインダのペンタプリズム。
実際にはペンタプリズムの下(フォーカシングスクリーンの直上)くらいにコンデンサレンズなんかが入っているので、これはそのコンデンサレンズを見ているのだと思いますが、この透明度の高さがファインダの明るさと、そしてこの加工精度の高さが素晴らしいファインダの視界を作り上げているのです。

底面。
左側の赤丸はモータードライブの巻き上げのギアが接続される部分。
その右上のオレンジの丸のところは、巻き上げたあとにモータードライブ側がシャッターを押すためのメス側です。
要するに、ここを下から押し上げてやるとシャッターが切れる、ということ。
その下の黄色丸は巻き戻しクラッチリリースボタン、フィルムを巻き戻すとき、このボタンを押してクラッチを切ってから巻き戻しクランクでフィルムを巻き戻します。
モータードライブ装着時はモータードライブで巻き戻せたのかな? どうだろう?
ちなみに、Fのときはそのモータードライブは一台一台調整(たぶん、初回だけ)してもらってからでないと使えなかったらしいですが、F2からは無調整で使えるようになっています。

この黄色丸の中は、ボタンは絞り込みボタン、外側のレバーはミラアップレバーです。

絞り込みボタンを押しながらレバーを反時計回しに回すとミラーが上がった状態で固定されます。
とくに顕微鏡写真や天体望遠鏡写真などを撮る場合、クイックリターンミラーの振動を嫌っての措置です。
絞り込みボタンを押しながらミラーをアップするため、レンズ側の絞りも絞り込まれた状態で、絞り込み時のショックも排除するという徹底ぶりです。
この状態だとどうせファインダで像を見ることはできませんからね。

絞り込みボタンの動作です。
これは押していない状態。

押すとレバーが下側に移動してレンズの絞り込みが行なわれます。

フィルム装填時の裏蓋開放は、底面の開放レバーを起こして『O』の方向に回します。

Fまでは裏蓋はそっくり外れましたが、F2からは右側に蝶番がついて扉状に開くようになりました。

シャッターは、素材はなんだろう、布ではなさそう、薄い金属、もしかしてチタンかな?
いや、まだチタンなんか使っていないか、ちょっと不明です。

このシャッター、横走りで、このころのシャッターとしては驚異的な1/2000秒が切れるのですが、シャッターの動きをちょっと動画に撮ってみました。
シャッターは先幕と後幕があり、1/15秒などの遅いシャッタースピードのときは先幕が走りきったあとに後幕が走りますが、速いシャッタースピードの場合はそれでは露出オーバーになるため、先幕が走り終える前に後幕が走り始め、追いかけっこをするように、つまり露光面の上をスリット状になった先幕と後幕が走ることで速いシャッタースピードを実現しています。
その様子がこちら。
ちょっとわかりにくいかな?
このカメラを譲ってくださったkub1951さんは、Aiの露出計連動レバーが、絞りリングを回していくと途中で外れる、とおっしゃっていたのですが、どうやら先にご紹介したフォトミックファインダをはずすときの前方側のロックが外れていたのが原因のようで、固定したら問題なく追従してくれました。
ここ開放の位置。

F5.6。

そして最小絞りのF16です。

今回、LR44のボタン電池を2個買ってきて露出計の動作も確認できましたが、このカメラはバッテリがなくても全機械式なので問題無し。
たとえバッテリが切れてしまっても撮影が続行できるというのがプロ機としての性能だったのでしょう。
それにしても、私も昔はわざわざマニュアル露出をしていたこともありましたが、もう長いこと自動露出に慣れ、ピントだってAFで殆ど一瞬と言っていい時間で合ってしまうなど、昔のプロカメラマンの方って本当に腕が立ったんだな〜と思います。
おそらく、露出はだいたいのシャッタースピードと絞り値をセットしておき、ピントは置きピンをして、そこに被写体が来た瞬間にシャッターを押すなど、様々な創意工夫があったのでしょう。
そういう面では、Nikon F2のシャッターのタイムラグもライバル機の中ではダントツだったようで、具体的な数字は忘れましたが、0点0何秒というごく僅かなラグで決定的瞬間を逃さない、というのもプロ仕様だったようです。
一眼レフの場合、シャッターボタンを押してから『絞りが絞り込まれ』『クリックリターンミラーを跳ね上げ』(この2つはほぼ同時だったでしょうが)そしてやっと『シャッターが切れる』ので、タイムラグの短縮もかなり大変だったことと思います。
そんなNikonも、残念ながらすでにカメラの国内生産はしなくなり、主力工場はThailandに移行してしまった模様。
Made in Japanがなくなったのはちょっと寂しいですね。

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詳細を紹介しない訳にはいかない宝物ですよ。
Nikon F2 Photomic A。

このカメラ、Nikonのプロ用カメラとしては2代目のボディにAi絞り連動方式のPhotomic Aファインダーを載せたバージョンです。
1959年に、Nikonは初の一眼レフカメラ、Nikon Fを発売しますが、その12年後の1971年に次号機 F2が発表されます。
外観はとても良くにていますが、中身はほとんど全部新設計/新造と言っていいんじゃないかと思います。
外観上のいちばんの違いは、Nikon FはレンジファインダーカメラのNikon SPボディを流用した設計であったため、シャッターボタンが軍艦部の背面に近い方に配置されていたのに対し、F2はより押しやすい前面に近い方に移動されたこと。
Fのシャッターボタンの配置は、もともとSPでは交換レンズ(たぶん広角から標準系まで)のピント調整をボディのマウント側に作られたヘリコイドを使って行なっており、その操作をちょうど一般的なシャッターボタンの位置に設置されたギアを中指で操作することで自然にシャッターボタンの位置に人差し指が来るような設計になっていたので、そのボディの機構を流用したためだと思います。
Nikon F、F2ともにプロ用機としては群を抜く耐久性を誇っており、様々な逸話が残っています。
特にFでは『海水に水没してしまったけど、真水に浸けて持ち帰り、オーバーホールに出したらちゃんと動作するようになって帰ってきた』とか、『戦場の従軍カメラマンが流れ弾を被弾したが、偶然にもNikon Fに着弾して命拾いした』とか。
Nikon F2においては、その耐久性は『永く(長く じゃない)使える』というのが印象的で、シャッターの耐久性は実に15万ショットと言われています。
私のNikon D750は2015年5月頃から使い始めて現在ちょうどまる8年(!! もうそんなにたつのか)を過ぎたところですが、まだ16,000ショットを超えたところです。
このペースで使ってもざっと75年、D750購入時からF2を使い始めたとしても残り67年はかかるわけで、フルメカニカルで内部はギアやスプリングの類で構成されているシャッターが、これほどの耐久性を有しているというのは驚異的というほかありません。
一方、Nikon F2とほぼ同時期に発売されたCanon F1は露出計をボディ内に配置したことで非常にスマートな外観を持ち、また、Canonの考え方として、広角から望遠に至るまで色のバランスを統一する(要するにレンズ間で色のばらつきを出さない)という思想を持っていたため、Canon F1はカラーを多用する広告分野で強く、耐久性が信条だったNikon F2は報道分野で活躍するというふうに、意図せずに舞台というか、得意分野が別れていたようです。
さて、そんなNikon F2のアウトラインです。
カメラ正面に向かって左側、いまではまず見ることがないセルタイマーレバー。
最大10秒から最短2秒まで。
その右上にあるのは、ボタンは絞り込みボタンで、絞りを実際にセットされている絞りまで絞り込んで被写界深度を確認できる、というものです。
その周囲にあるリング状のレバーはミラーアップレバーで、絞り込みボタンを押しながら反時計回しに回します。
ミラーアップは、特に振動を嫌う拡大撮影、例えば顕微鏡写真や天体望遠鏡を使った写真撮影のとき、シャッターを押す前にミラーアップしておけばクイックリターンミラーのショックの影響を排除できる、というものです。

いまのNikonのレフ機にも共通のレンズを外すためのロック解除ボタンです。
デザイン的には1977年発売のNikon FEと同じもので、おそらく同じパーツが共通して使われているものでしょう。

フォトミックファインダーはAi露出計連動のもの。
このあたりはNikon F/F2共通の拡張性の高さと言っていいのだと思いますが、露出計の機構をすべてファインダー内に収めてしまっているため、こうした『カニの爪』→『Ai』への移行の際も、ボディはそのままでファインダーを交換してやれば新方式に対応できるという離れ業ができたのです。
といっても、おそらく技術陣の創意工夫は大変な困難を伴ったものと思われますが。

このフォトミックファインダはAi方式対応なので、露出計連動レバーがつけられており、ついていたレンズももともとはカニの爪方式だったものがAi改造されていて、その露出計連動ガイドと噛み合って絞りの相対位置を検出できるようになっています。
ちなみに、Photomic Aファインダーだったか、このF2 Photomic Aカメラボディだったか、どちらかを購入するとカニの爪方式のレンズを一本だけ無料でAiに改造することができるサービスがあったと記憶します。
改造そのものは当時、一本あたり2,000円だったか3,000円だったかがかかったと思いますので、そこそこ喜ばれたんじゃないかなと。

F2を上から見下ろしたところ。
非常にシンプルですね。
フォトミックファインダの中に露出計が組み込まれているので、後述するシャッタースピードダイヤルとASA感度(ISO感度)が同軸に備えられています。
つまり、カメラのシャッタースピードダイヤルの上にフォトミックファインダがASA感度設定ダイヤルと一体になってかぶさっているという格好です。
こうすることで別にASA感度ダイヤルを設けるよりもスペースを節約しているのだろうと思われます。

本来は上から見えるはずのシャッタースピードダイヤルは、ファインダがかぶさったことによって見えなくなるので、ファインダ側にこのようにシャッタースピードを表示するようになっています。

電源スイッチは巻き上げレバーに仕込まれています。
この格納状態では電源はOff。

引き出して赤い丸が見えると電源Onです。
このPhotomic Aファインダは測光用の受光素子にCdS(硫化カドミウム)を使用しています。
このCdSというのは光の強さによって抵抗値が変わる性質のもので、暗くなるほど抵抗値が大きくなります。
真っ暗になるとほとんど抵抗値が無限大になるため、CdSだけを使うのであれば電源のOn/Offは不要なはずです(PENTAX SPFがそうでした)が、このPhotomic Aファインダの上位機種としてPhotomic ASというファインダがあり、こちらはより感度がよく、さらに反応速度も速いSPD(シリコンフォトダイオード)が使用されていて、これは光の強さに関係なく常に通電された状態でバッテリを消費するため、その使用を前提にして設けられたものでしょう。

ASA(ISO)感度の設定ダイヤルです。
手元に来た時点ではASA400がセットされていました。

このダイヤルをつまんで上に持ち上げてやるとASA感度の変更ができます。
ここではASA100にセットしてみました。
ASA感度ダイヤルに『1』とか『2』の表示がありますが、これは露出倍数でしょうね。
つまり、ASA100のフィルムを使っているときに『1』を『100』のところに持ってきてやると『一段暗い露出』を示してくれ、『2』だと『2段暗い』という感じ。
別にこの表示がなくても、同じことは感度設定を200や400に合わせても同じことができます。
逆に50、25に合わせるとそれぞれ1段、2段明るい露出を示してくれます。

その露出はファインダ内だけではなく、このファインダの頭のところにも表示されます。
これは電源Off状態なので針は動いていませんが...

電源をOnにすると針が動きます。
この針を...

ここに来るようにシャッターダイヤル、または絞りリングを調整すると適正露出が得られます。
先程の露出補正については、その露出補正値にセットして同じようにここに合わせると、設定した段数だけオーバー、あるいはアンダーに設定できる、という寸法です。
慣れてくると、わざわざ露出倍数を設定しなくても、この針の位置で、例えば1/2段とか1段とかを調整できるようになるものです。
Nikon F2のスゴイところは、機械制御シャッタであるのに、ダイヤルの数字の間の中間スピードも設定できたところです。
私の記憶の中ではそのようなことができたのはこのNikon F2くらいだったと思います。

この露出ゲージは当然のことながらファインダ内でも観ることができます。
ファインダー下部の表示のうち、真ん中にあるのが露出計のゲージで、右側にセットしてあるシャッタースピード、そして、左側にはNikon純正でAI改造をしたレンズであればファインダの小窓から絞りリングの絞り値をここに表示してくれるのぞき窓があります。
スマホで撮った画像なので荒いですが、もちろん、肉眼で見たらもっと鮮明に見えますよ。
ちなみに、中央にある円形のものは、ピントを厳密に調整できるマイクロプリズムと呼ばれるもので、ボケの大きさを4倍(うろ覚え)に見せてくれるのでピントの山をつかみやすいというものです。

こちらはフィルムの巻き戻しクランクとレバーです。
現在のデジタル一眼には絶対にない装備(笑)
ちなみにこのカメラにはストロボを装着するいわゆるホットシューがありませんが、別売でここにホットシューのアタッチメントを取り付け、当然コードレスで純正ストロボを発光させることができます。

マウント側に目を転じます。
これは現在でもD750などに装備されている露出計連動レバーです。

Nikonらしく、カニ爪のレンズを使うときはこうやってちゃんと格納して干渉しないようにできます。

レバーを再び出すときは『A』の文字のところにあるレバーを横にスライドさせてあげればこうやって出てきます。

さて、このF2のF2たるところです。
背面のこのボタンを押してやると、フォトミックファインダの後ろ側がリリースされます。
このボタンがけっこう硬くて、私は親指の爪でも押しきれず、プラスチックのボールペンの先端で押してやることでリリースできました。

前方のロックはこのレバーを押し込みながら前方に回転させることで同じようにリリースできます。

外れました。
側面のレバーは、回さない状態だとこの爪がこの位置にあってボディにファインダを固定していますが...

回転させるとこのように爪が開いて拘束を解きます。

ファインダを外すとシャッターダイヤルが姿を現しました。
指標は左側にありまして、いまは1/4秒にセットされた状態。
この赤矢印の先にあるポッチはファインダ側にはまってシャッタースピードダイヤルの位置を伝える役割です。

先程のASA感度ダイヤルの裏側、ここにはまるのです。

レンズを通ってきた像がミラーで90度方向を変え、フォーカシングスクリーンに結像している様子がよくわかります(ここでは左右反転しています)。
これがファインダの中に設置されているペンタプリズムで正像に整えられて撮影者の眼に届く、という構造。

そのファインダのペンタプリズム。
実際にはペンタプリズムの下(フォーカシングスクリーンの直上)くらいにコンデンサレンズなんかが入っているので、これはそのコンデンサレンズを見ているのだと思いますが、この透明度の高さがファインダの明るさと、そしてこの加工精度の高さが素晴らしいファインダの視界を作り上げているのです。

底面。
左側の赤丸はモータードライブの巻き上げのギアが接続される部分。
その右上のオレンジの丸のところは、巻き上げたあとにモータードライブ側がシャッターを押すためのメス側です。
要するに、ここを下から押し上げてやるとシャッターが切れる、ということ。
その下の黄色丸は巻き戻しクラッチリリースボタン、フィルムを巻き戻すとき、このボタンを押してクラッチを切ってから巻き戻しクランクでフィルムを巻き戻します。
モータードライブ装着時はモータードライブで巻き戻せたのかな? どうだろう?
ちなみに、Fのときはそのモータードライブは一台一台調整(たぶん、初回だけ)してもらってからでないと使えなかったらしいですが、F2からは無調整で使えるようになっています。

この黄色丸の中は、ボタンは絞り込みボタン、外側のレバーはミラアップレバーです。

絞り込みボタンを押しながらレバーを反時計回しに回すとミラーが上がった状態で固定されます。
とくに顕微鏡写真や天体望遠鏡写真などを撮る場合、クイックリターンミラーの振動を嫌っての措置です。
絞り込みボタンを押しながらミラーをアップするため、レンズ側の絞りも絞り込まれた状態で、絞り込み時のショックも排除するという徹底ぶりです。
この状態だとどうせファインダで像を見ることはできませんからね。

絞り込みボタンの動作です。
これは押していない状態。

押すとレバーが下側に移動してレンズの絞り込みが行なわれます。

フィルム装填時の裏蓋開放は、底面の開放レバーを起こして『O』の方向に回します。

Fまでは裏蓋はそっくり外れましたが、F2からは右側に蝶番がついて扉状に開くようになりました。

シャッターは、素材はなんだろう、布ではなさそう、薄い金属、もしかしてチタンかな?
いや、まだチタンなんか使っていないか、ちょっと不明です。

このシャッター、横走りで、このころのシャッターとしては驚異的な1/2000秒が切れるのですが、シャッターの動きをちょっと動画に撮ってみました。
シャッターは先幕と後幕があり、1/15秒などの遅いシャッタースピードのときは先幕が走りきったあとに後幕が走りますが、速いシャッタースピードの場合はそれでは露出オーバーになるため、先幕が走り終える前に後幕が走り始め、追いかけっこをするように、つまり露光面の上をスリット状になった先幕と後幕が走ることで速いシャッタースピードを実現しています。
その様子がこちら。
ちょっとわかりにくいかな?
このカメラを譲ってくださったkub1951さんは、Aiの露出計連動レバーが、絞りリングを回していくと途中で外れる、とおっしゃっていたのですが、どうやら先にご紹介したフォトミックファインダをはずすときの前方側のロックが外れていたのが原因のようで、固定したら問題なく追従してくれました。
ここ開放の位置。

F5.6。

そして最小絞りのF16です。

今回、LR44のボタン電池を2個買ってきて露出計の動作も確認できましたが、このカメラはバッテリがなくても全機械式なので問題無し。
たとえバッテリが切れてしまっても撮影が続行できるというのがプロ機としての性能だったのでしょう。
それにしても、私も昔はわざわざマニュアル露出をしていたこともありましたが、もう長いこと自動露出に慣れ、ピントだってAFで殆ど一瞬と言っていい時間で合ってしまうなど、昔のプロカメラマンの方って本当に腕が立ったんだな〜と思います。
おそらく、露出はだいたいのシャッタースピードと絞り値をセットしておき、ピントは置きピンをして、そこに被写体が来た瞬間にシャッターを押すなど、様々な創意工夫があったのでしょう。
そういう面では、Nikon F2のシャッターのタイムラグもライバル機の中ではダントツだったようで、具体的な数字は忘れましたが、0点0何秒というごく僅かなラグで決定的瞬間を逃さない、というのもプロ仕様だったようです。
一眼レフの場合、シャッターボタンを押してから『絞りが絞り込まれ』『クリックリターンミラーを跳ね上げ』(この2つはほぼ同時だったでしょうが)そしてやっと『シャッターが切れる』ので、タイムラグの短縮もかなり大変だったことと思います。
そんなNikonも、残念ながらすでにカメラの国内生産はしなくなり、主力工場はThailandに移行してしまった模様。
Made in Japanがなくなったのはちょっと寂しいですね。

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少し思い出しました
フォトミックファインダーの外し方も忘れてましたから、私がごちゃごちゃやって露出計連動ピンが噛み合ってなかったんでしょうね。
セルフタイマーレバー?そういえばありましたねえ。
私は現在オリンパスOMDを使ってますが、セルフタイマーをセットするまでモニターを何回クリックしないといけないんだ‼️ ワンクリックで設定できるようにしろよ❗️といつも怒ってます。
セルフタイマーの使用はツーリングで自撮りするためです。
目的地に着いたら証拠写真として万歳ポジションで自撮りします。最初の頃は人目を気にしてましたが、今では人目があろうと平気で万歳、ピコピコ、カシャ❗️
今のカメラにもセルフタイマーレバー付けて欲しいなぁ。
セルフタイマーレバー?そういえばありましたねえ。
私は現在オリンパスOMDを使ってますが、セルフタイマーをセットするまでモニターを何回クリックしないといけないんだ‼️ ワンクリックで設定できるようにしろよ❗️といつも怒ってます。
セルフタイマーの使用はツーリングで自撮りするためです。
目的地に着いたら証拠写真として万歳ポジションで自撮りします。最初の頃は人目を気にしてましたが、今では人目があろうと平気で万歳、ピコピコ、カシャ❗️
今のカメラにもセルフタイマーレバー付けて欲しいなぁ。
Re: 少し思い出しました
kub1951さん、こんばんは(^^)
> フォトミックファインダーの外し方も忘れてましたから、私がごちゃごちゃやって露出計連動ピンが噛み合ってなかったんでしょうね。
そうかも知れませんね(^^)
とにかく壊れていなくてよかったです(^^)
バッテリ入れたらちゃんと動作しましたので、フィルムを入れればバッチリ撮影できます。
あ、F2はバッテリなくてもとれますね、そうそう、露出計が動く、ってことです(^^)
> セルフタイマーレバー?そういえばありましたねえ。
> 私は現在オリンパスOMDを使ってますが、セルフタイマーをセットするまでモニターを何回クリックしないといけないんだ‼️ ワンクリックで設定できるようにしろよ❗️といつも怒ってます。
そうなんですよね〜
デジカメになってセルフタイマーもメニューの下に隠れているケースもちょいちょいあるようですよね。
最初にセルフタイマーをなくしたのはCanonのAE-1だったと記憶します。
あの『じ〜〜〜〜...』って音が良かったんですけどねぇ。
> セルフタイマーの使用はツーリングで自撮りするためです。
> 目的地に着いたら証拠写真として万歳ポジションで自撮りします。最初の頃は人目を気にしてましたが、今では人目があろうと平気で万歳、ピコピコ、カシャ❗️
> 今のカメラにもセルフタイマーレバー付けて欲しいなぁ。
よ〜くわかります(^^)
やっぱり自撮りしますよね(^^)
私は独身時代の自撮り写真を奥さんが見て『やめろよな』って言われてシュン太郎になりました(笑)
セルフタイマーくらいは昔ながらがいいな〜と思いますよね〜
あの『ぴ、ぴ、ぴ、ぴぴぴぴ...』って音を聴いていたら顔がこわばっちゃいますよ(笑)
Kachi//
> フォトミックファインダーの外し方も忘れてましたから、私がごちゃごちゃやって露出計連動ピンが噛み合ってなかったんでしょうね。
そうかも知れませんね(^^)
とにかく壊れていなくてよかったです(^^)
バッテリ入れたらちゃんと動作しましたので、フィルムを入れればバッチリ撮影できます。
あ、F2はバッテリなくてもとれますね、そうそう、露出計が動く、ってことです(^^)
> セルフタイマーレバー?そういえばありましたねえ。
> 私は現在オリンパスOMDを使ってますが、セルフタイマーをセットするまでモニターを何回クリックしないといけないんだ‼️ ワンクリックで設定できるようにしろよ❗️といつも怒ってます。
そうなんですよね〜
デジカメになってセルフタイマーもメニューの下に隠れているケースもちょいちょいあるようですよね。
最初にセルフタイマーをなくしたのはCanonのAE-1だったと記憶します。
あの『じ〜〜〜〜...』って音が良かったんですけどねぇ。
> セルフタイマーの使用はツーリングで自撮りするためです。
> 目的地に着いたら証拠写真として万歳ポジションで自撮りします。最初の頃は人目を気にしてましたが、今では人目があろうと平気で万歳、ピコピコ、カシャ❗️
> 今のカメラにもセルフタイマーレバー付けて欲しいなぁ。
よ〜くわかります(^^)
やっぱり自撮りしますよね(^^)
私は独身時代の自撮り写真を奥さんが見て『やめろよな』って言われてシュン太郎になりました(笑)
セルフタイマーくらいは昔ながらがいいな〜と思いますよね〜
あの『ぴ、ぴ、ぴ、ぴぴぴぴ...』って音を聴いていたら顔がこわばっちゃいますよ(笑)
Kachi//