NIKKOR-Q 200mm F4.0 〜Ai改造後のテストショット〜
本日もご覧いただき、ありがとうございます。
前回の記事でAi化が成功したNIKKOR−Q 200mmF4.0。
D750に使えることになったら、そりゃ早速テストショットしたいじゃないですか。
ということで、翌日の在宅勤務の朝の散歩のときに装着して行ってきました。
と、ちょっとその前に軽い蘊蓄を。
というほどのものでもないのですが、このレンズのプロフィールみたいなものです。
1959年にNikon(当時の日本光学工業)の最初の一眼レフとして、Nikon Fが登場しました。
それまではNikon SPを代表とする、レンジファインダーカメラがカメラの主流でしたが、一眼レフの登場で、特に望遠レンズ系の使い勝手が飛躍的に向上しました。
レンジファインダーカメラはレンズとは別に、カメラ後方から見てレンズの左上のあたりにファインダー(レンジファインダー)が設置されていて、これを覗いて構図を決定して撮影をしていました。
しかし、レンズとは別の光学系を元に撮影範囲を見ているので、レンズの焦点距離が長くなればなるほど、実際にレンズが切り取る撮影範囲と、ファインダーで観ている撮影範囲にズレが生じます。
このズレをパララクスと呼びますが、このパララクスは望遠撮影のときだけではなく、短い焦点距離のレンズであっても近接距離での撮影時には同じ問題が出ます。
これに比べて、一眼レフでは実際に撮影するレンズを通して撮影範囲を観ているので、基本的にこのパララクスは発生しません。
ただし、一眼レフはレンズからフィルム(現在の撮像素子)面に至る光学系の途中にミラーを介在させて、レンズが捉えた画像を90度上方に反射させてフォーカシングスクリーン(磨りガラス)に投影し、さらにペンタプリズムでその像の上下左右を正方向に整えてからファインダーを通して撮影者に見せているので、その光学系の精度によって実際のフィルムサイズ(24mm×36mm)ピタリの像を得られるわけではなく、普及価格帯のカメラでは、パララクスはないけどフィルム面のサイズに対して若干狭い、視野率92%程度、中級機で95〜97%くらい、そしてNikon Fなどの高級機・プロ機では100%の視野率と、若干の精度差はありました。
Nikon Fの登場でそうしたパララクスの呪縛が解けた一眼レフカメラは、それまでのレンジファインダーカメラの望遠レンズの限界が100mm程度だったものが一気にブレークスルーができて、少しずつ望遠レンズの充実が図られていくのでした。
そんな中でNikonの本格的望遠レンズとして登場したのがNIKKOR-Q 200mm F4.0で、初期型の登場は確か1961年。
NIKKORのあとについている『Q』のアルファベットは内部のレンズの枚数を表していて、その意味は『4枚のレンズ』ということです。とてもシンプルな構成ですね。
それから7〜8年後、主にレンズの色再現性が改善された後期型が登場したのが1968年か1969年で、私がいただいたレンズはその後期型にあたり、つまりは設計年次は1968年ごろ、というレトロレンズです。
先日、このレンズの反射防止対策は単層膜コーティングだろうと書きましたが、後期型なのでたぶん多層膜コーティングでゴーストやフレアはかなり改善されていると思います。
また、最短撮影距離は、初期型が3メートルであったものが、後期型は2メートルに縮められており、それでも前期・後期を見分けることができます。
さて、そんなNikonの望遠レンズの橋頭堡を開いたとも言える200mmレンズです。
もうね、ウキウキして朝も早よから目が覚めましたとも。

いつもの散歩道に出ると、前日に雨が降っていたので、草木は生き生きとしているし、葉に水滴がついているのが涼し気でいい。
撮影データ:1/160sec F5.6

いくつかの写真では絞りを変えて数枚同じ構図で撮影してみました。
1/500sec F4(開放)

1/320sec F5.6(一段絞り込み)

1/125sec F8(二段絞り込み)

開放のF4では若干周辺光量の低下が観られますが、像はシャープで非常に良好な切れ味を示します。
こちらはこの一枚だけ、手前の出っ張った飛び石にピントを合わせています。
1/320sec F5.6(1段絞り込み)
ピントが合っているところの石の質感もしっかり出ています。

ここから再び絞りを三段階に変えてみます。
1/500sec F4

1/320sec F5.6

1/160sec F8
このショットは少し手ブレがしているのでシャープネスは落ちているように見えますが。

傾向としては最初の3連ショットと同じで、後の水が白く砕けているところのボケも美しいと言えます。
ピントが合っているススキ(?)の穂先は開放からシャープですね。
こちらのショットも単発。
1/200sec F4(開放)
水滴が非常にシャープに捉えられています。
一段絞っていると言われても『そうだろうね』と思えるくらいの素晴らしい描写。

つぎは2枚です。
1/320sec F4(開放)

1/250sec F5.6

つぎも2枚。
1/200sec F4

1/125sec F5.6

つぎ、3枚。
ピントは下側の水滴がついた葉っぱに合わせてあります。
1/400sec F4

1/250sec F5.6

1/125sec F8

これも3枚。
こちらは左下側のムラサキツメクサにピントをおいてあります。
1/500sec F4

1/320 F5.6

1/160sec F8

更に3枚。
画面中央の花にピント合わせて。
1/250sec F4

1/160sec F5.6

1/80sec F8

こちらは無限遠で撮影。
1/800sec F5.6
大文字焼きの山肌の様子が克明に捉えられています。
周囲の木々の立体感、山肌を漂うガスの再現性もいいですね。

こちらも遠景で、ピントは無限遠固定で4枚絞りを変えて撮ってみました。
1/800sec F4

1/800sec F5.6
シャッタースピードが変わっていないのは、おそらくISO感度が自動アップされたからでしょう。

1/400sec F8

1/200sec F11

開放での周辺光量の低下は観られますが、全体に四隅まで開放から絞り込んだ映像まで同程度の解像度を持っていることが見て取れます。
非常に優秀な描写性能ですね。
再び近接撮影です。
1/800sec F4

1/800sec F5.6

1/400sec F8

最後の3枚。
1/320sec F4

1/200sec F5.6

1/100sec F8

以上、簡単なスナップでのテストショットですが、いやあ驚きました。
最新のレンズのほうが性能がいいのは当然なのですが、基本設計が1960年代初頭のこのレンズ、非常にシンプルなレンズ構成で開放からここまで良好な描写をさせていることに舌を巻きました。
Ai機構によって、絞り優先AEのみではありますが開放測光で露出計が使用でき、開放からキレのある画像が得られるこのレンズは、同じ設計思想のもとで製作されているズームとは一味違います。
私の手持ちのズームは、200mmでの開放F値はF5.3まで落ち、キレのある描写をさせようとするとF6.3くらいまで絞る必要があって、実用的なレンズのF値が約1.5段明るいことは、これくらいの焦点距離だとシャッタースピードを上げることができるので手ブレ防止にも有利。
改めて1960年当時の日本光学工業の光学技術の高さを思い知った感じ。
まあ、あたりまえっちゃあたりまえですね、日本光学は戦時中から光学兵器を製作していたので、光学性能は昔から折り紙付きです。
現代のなんでもオートマチックのレンズとは違い、『絞りを決め』、『ピントを手動で合わせ』てからシャッターを押すという『儀式』が『写真を撮っている』という気分を盛り上げてくれるものでもあります。
ヘリコイドのぬる〜っとしたトルク感もいいですね。
製造時期が新しい、私が持っている105mm F2.5よりもシャープじゃないかと思うくらいの描写で、これだったら75-300ズームよりもこっちを持って出かけたほうが幸せになれそうな気がする(^^)
いやほんとにありがたいことです。
大切にさせていただきます(^^)

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前回の記事でAi化が成功したNIKKOR−Q 200mmF4.0。
D750に使えることになったら、そりゃ早速テストショットしたいじゃないですか。
ということで、翌日の在宅勤務の朝の散歩のときに装着して行ってきました。
と、ちょっとその前に軽い蘊蓄を。
というほどのものでもないのですが、このレンズのプロフィールみたいなものです。
1959年にNikon(当時の日本光学工業)の最初の一眼レフとして、Nikon Fが登場しました。
それまではNikon SPを代表とする、レンジファインダーカメラがカメラの主流でしたが、一眼レフの登場で、特に望遠レンズ系の使い勝手が飛躍的に向上しました。
レンジファインダーカメラはレンズとは別に、カメラ後方から見てレンズの左上のあたりにファインダー(レンジファインダー)が設置されていて、これを覗いて構図を決定して撮影をしていました。
しかし、レンズとは別の光学系を元に撮影範囲を見ているので、レンズの焦点距離が長くなればなるほど、実際にレンズが切り取る撮影範囲と、ファインダーで観ている撮影範囲にズレが生じます。
このズレをパララクスと呼びますが、このパララクスは望遠撮影のときだけではなく、短い焦点距離のレンズであっても近接距離での撮影時には同じ問題が出ます。
これに比べて、一眼レフでは実際に撮影するレンズを通して撮影範囲を観ているので、基本的にこのパララクスは発生しません。
ただし、一眼レフはレンズからフィルム(現在の撮像素子)面に至る光学系の途中にミラーを介在させて、レンズが捉えた画像を90度上方に反射させてフォーカシングスクリーン(磨りガラス)に投影し、さらにペンタプリズムでその像の上下左右を正方向に整えてからファインダーを通して撮影者に見せているので、その光学系の精度によって実際のフィルムサイズ(24mm×36mm)ピタリの像を得られるわけではなく、普及価格帯のカメラでは、パララクスはないけどフィルム面のサイズに対して若干狭い、視野率92%程度、中級機で95〜97%くらい、そしてNikon Fなどの高級機・プロ機では100%の視野率と、若干の精度差はありました。
Nikon Fの登場でそうしたパララクスの呪縛が解けた一眼レフカメラは、それまでのレンジファインダーカメラの望遠レンズの限界が100mm程度だったものが一気にブレークスルーができて、少しずつ望遠レンズの充実が図られていくのでした。
そんな中でNikonの本格的望遠レンズとして登場したのがNIKKOR-Q 200mm F4.0で、初期型の登場は確か1961年。
NIKKORのあとについている『Q』のアルファベットは内部のレンズの枚数を表していて、その意味は『4枚のレンズ』ということです。とてもシンプルな構成ですね。
それから7〜8年後、主にレンズの色再現性が改善された後期型が登場したのが1968年か1969年で、私がいただいたレンズはその後期型にあたり、つまりは設計年次は1968年ごろ、というレトロレンズです。
先日、このレンズの反射防止対策は単層膜コーティングだろうと書きましたが、後期型なのでたぶん多層膜コーティングでゴーストやフレアはかなり改善されていると思います。
また、最短撮影距離は、初期型が3メートルであったものが、後期型は2メートルに縮められており、それでも前期・後期を見分けることができます。
さて、そんなNikonの望遠レンズの橋頭堡を開いたとも言える200mmレンズです。
もうね、ウキウキして朝も早よから目が覚めましたとも。

いつもの散歩道に出ると、前日に雨が降っていたので、草木は生き生きとしているし、葉に水滴がついているのが涼し気でいい。
撮影データ:1/160sec F5.6

いくつかの写真では絞りを変えて数枚同じ構図で撮影してみました。
1/500sec F4(開放)

1/320sec F5.6(一段絞り込み)

1/125sec F8(二段絞り込み)

開放のF4では若干周辺光量の低下が観られますが、像はシャープで非常に良好な切れ味を示します。
こちらはこの一枚だけ、手前の出っ張った飛び石にピントを合わせています。
1/320sec F5.6(1段絞り込み)
ピントが合っているところの石の質感もしっかり出ています。

ここから再び絞りを三段階に変えてみます。
1/500sec F4

1/320sec F5.6

1/160sec F8
このショットは少し手ブレがしているのでシャープネスは落ちているように見えますが。

傾向としては最初の3連ショットと同じで、後の水が白く砕けているところのボケも美しいと言えます。
ピントが合っているススキ(?)の穂先は開放からシャープですね。
こちらのショットも単発。
1/200sec F4(開放)
水滴が非常にシャープに捉えられています。
一段絞っていると言われても『そうだろうね』と思えるくらいの素晴らしい描写。

つぎは2枚です。
1/320sec F4(開放)

1/250sec F5.6

つぎも2枚。
1/200sec F4

1/125sec F5.6

つぎ、3枚。
ピントは下側の水滴がついた葉っぱに合わせてあります。
1/400sec F4

1/250sec F5.6

1/125sec F8

これも3枚。
こちらは左下側のムラサキツメクサにピントをおいてあります。
1/500sec F4

1/320 F5.6

1/160sec F8

更に3枚。
画面中央の花にピント合わせて。
1/250sec F4

1/160sec F5.6

1/80sec F8

こちらは無限遠で撮影。
1/800sec F5.6
大文字焼きの山肌の様子が克明に捉えられています。
周囲の木々の立体感、山肌を漂うガスの再現性もいいですね。

こちらも遠景で、ピントは無限遠固定で4枚絞りを変えて撮ってみました。
1/800sec F4

1/800sec F5.6
シャッタースピードが変わっていないのは、おそらくISO感度が自動アップされたからでしょう。

1/400sec F8

1/200sec F11

開放での周辺光量の低下は観られますが、全体に四隅まで開放から絞り込んだ映像まで同程度の解像度を持っていることが見て取れます。
非常に優秀な描写性能ですね。
再び近接撮影です。
1/800sec F4

1/800sec F5.6

1/400sec F8

最後の3枚。
1/320sec F4

1/200sec F5.6

1/100sec F8

以上、簡単なスナップでのテストショットですが、いやあ驚きました。
最新のレンズのほうが性能がいいのは当然なのですが、基本設計が1960年代初頭のこのレンズ、非常にシンプルなレンズ構成で開放からここまで良好な描写をさせていることに舌を巻きました。
Ai機構によって、絞り優先AEのみではありますが開放測光で露出計が使用でき、開放からキレのある画像が得られるこのレンズは、同じ設計思想のもとで製作されているズームとは一味違います。
私の手持ちのズームは、200mmでの開放F値はF5.3まで落ち、キレのある描写をさせようとするとF6.3くらいまで絞る必要があって、実用的なレンズのF値が約1.5段明るいことは、これくらいの焦点距離だとシャッタースピードを上げることができるので手ブレ防止にも有利。
改めて1960年当時の日本光学工業の光学技術の高さを思い知った感じ。
まあ、あたりまえっちゃあたりまえですね、日本光学は戦時中から光学兵器を製作していたので、光学性能は昔から折り紙付きです。
現代のなんでもオートマチックのレンズとは違い、『絞りを決め』、『ピントを手動で合わせ』てからシャッターを押すという『儀式』が『写真を撮っている』という気分を盛り上げてくれるものでもあります。
ヘリコイドのぬる〜っとしたトルク感もいいですね。
製造時期が新しい、私が持っている105mm F2.5よりもシャープじゃないかと思うくらいの描写で、これだったら75-300ズームよりもこっちを持って出かけたほうが幸せになれそうな気がする(^^)
いやほんとにありがたいことです。
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コメントの投稿
きれいですね
廃棄寸前のレンズだったのに、私の予想以上にきれいに写ってますね。
新しい命を吹き込んでもらって、こちらこそ感謝です。
新しい命を吹き込んでもらって、こちらこそ感謝です。
Re: きれいですね
kub1951さん、こんばんは(^^)
> 廃棄寸前のレンズだったのに、私の予想以上にきれいに写ってますね。
本当にきれいに写りますよね。
私もここまで写ってびっくりしました。
少なくとも開放はもう少し甘いかなと予想していたんですが、さすがはNIKKORレンズです。
> 新しい命を吹き込んでもらって、こちらこそ感謝です。
いえいえ、お礼を言わなければならないのは私の方です。
こんなに素晴らしいものを頂いて、本当にありがとうございました。
このレンズでいろんな写真を撮らせていただきますね。
そうそう、マクロや85ミリでも(^^)
Kachi//
> 廃棄寸前のレンズだったのに、私の予想以上にきれいに写ってますね。
本当にきれいに写りますよね。
私もここまで写ってびっくりしました。
少なくとも開放はもう少し甘いかなと予想していたんですが、さすがはNIKKORレンズです。
> 新しい命を吹き込んでもらって、こちらこそ感謝です。
いえいえ、お礼を言わなければならないのは私の方です。
こんなに素晴らしいものを頂いて、本当にありがとうございました。
このレンズでいろんな写真を撮らせていただきますね。
そうそう、マクロや85ミリでも(^^)
Kachi//